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7. 結言
船体構造に作用する荷重およびその荷重に対する構造応答の実態を把握し、船体構造の強度評価の信頼性を高めることを目的とする本研究は、2隻の実船計測を行うことを研究の柱としてきた。
本研究は平成4年度から4年間にわたって実施したが、大規模な実船計測に対応するため、初年度は計測の準備期間とした。計測対象船は、運動特性、構造様式の異なる船型としてコンテナ船およびバルクキャリアを選択し、それぞれ2〜3年間にわたる長期の計測データを収集した。厳しい海象条件に遭遇し、計測不能となった計測点も一部あったが多くの貴重な計測データを得ることができた。これら実船計測および計測データの解析は、本部会で開発した自動計測、解析システムで実行され多大の実績を上げた。
また、荷重・応力計算法の検証については、2船の実船計測結果との比較検討を行ない、その精度、問題点および今後の改善点を抽出した。さらに、簡易計算法として相関係数法を開発し、その有用性についても検討した。荷重、応力の短長期予測計算に多大な影響を及ぼす波浪に関しては、波高計による計測データを新たに開発した方法による解析を実施し、目視観測および波浪推算結果との比較も実施した。
本研究部会の4年間の研究で得られた主な成果は次のとおりである。
(1)開発した船上自動計測システムおよび陸上データ解析システムは、2船の長期実船計測で十分な実績をあげ、その有用性を確認した。今後の実船計測計画に大いに役立つことが期待できる。
(2)コンテナ船の北米航路16航海分、バルクキャリアの豪州航路をはじめインド洋、大西洋航路など7航海分の海象条件、船体運動、構造応答の長期データを収集した。また、これらの解析データについてその妥当性を確認した。
(3)波浪について、目視観測、波高計による計測、波浪推算のデータを比較検討し、本部会で開発した波浪解析法の妥当性を確認した。
(4)現状設計で採用されているストリップ法に基づく荷重・応力計算法と計測結果の比較では、加速度等の船体運動、船体縦曲げ等の断面力は、短長期予測ともに比較的良い一致が見られ、計算法が有効であることが確認できた。波浪変動圧については船底、喫水線下の船側部では良い一致が見られるが、喫水線付近では差異がみられ、喫水線上の波の影響など非線形性を考慮しさらに改善の必要がある。
(5)応力については、縦通部材は本部会で採用した離散化手法に基づく計算結果と計測結果は比較的良い一致が見られる。横部材については差異の見られる計測点があるが、この原因が荷重に関与するものか構造解析モデルなど計算法に関考するものかさらに検討の余地がある。
(6)船体運動、応力の長期予測の計算値は計測値を上回っており、現状の設計が妥当であることが確認できた。
(7)以上のように実際の航行状態における船体運動、構造応答のデータが収集できたこと、波浪解析の精度向上が図れたこと、および離散化手法に基づく計算手法が設計で採用可能な精度を有していることが確認できたことから船体構造設計の信頼性向上が図れる。
本研究では、多くの貴重なデータを収集することができたが、その反面データ解析に総力を注ぐことになったこと、荷重・応力計算法については現状方法の検証という目的から、代表的な航海の計測結果との比較を実施するにとどまった。しかし、実船計測では、当初の計画を大幅に上回る豊富なデータが収集されており、厳しい海象に遭遇したデータも得られていることから、これらのデータが他方面の研究に大いに役立つことが期待できる。
最後に、計測船を提供下さり計測のため種々の便宜をはかって戴きました川崎汽船株式会社殿ならびに第一中央汽船株式会社殿に感謝の意を表します。また、長期間の継続計測をお願いいたしました“せとぶりっじ”および“PACIFIC NOVA”の船長はじめ乗組員の方々には、計測機器の設置、計測作業等について便宜をおはかり下さいましたことに対し厚くお礼申し上げます。
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